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事業構想力

  • 澤拓磨 TS&Co.代表取締役 兼 最高経営責任者(CEO)
  • 4月19日
  • 読了時間: 7分

更新日:4月21日




概要

  • 構想とは、0から物事の全体像や方向性を考え取りまとめること。0からの思考が求められる点や結果を実現するための明確な行動方針が求められる訳ではない点が、構想と計画の本質的な違い

  • つまり、事業構想とは、0から事業の全体像や方向性を考え取りまとめること

  • 企業経営において、事業構想は無視できない頻出課題。事業構想は新規事業にのみ必要とされる訳ではなく、2025年現在でも、経営環境の変化に対応すべく、既存事業の成長戦略を定めるためにも事業構想力が必要不可欠

  • 事業構想プロセスは、「事業の全体像や方向性に関する現時点の仮説を可視化し、仮説を進化させる」、「優先順位の高い事業案の事業化に向け厳格に検証する」、「事業案を絞る」を経る

  • 事業構想の本質は、「可能性・仮説であり蓋然性・真説ではない」、「同質ではなく異質」、「絞る」の3つ。特に、異質からの別の視点を歓迎し、同質化された人材のみでは発見することができなかったであろう未来の世界像や自社が顧客に選ばれ続ける方法等を積極的に取り入れることが有効




事業構想は企業の頻出課題


構想とは、0から物事の全体像や方向性を考え、取りまとめることだ。よく似た言葉に計画があるが、0からの思考が求められる点や結果を実現するための明確な行動方針が求められる訳ではない点に、構想と計画の本質的な違いがある。

従って、実務において、しばしば構想段階・計画段階といったフェーズ分けがなされる。


つまり、事業構想とは、0から事業の全体像や方向性を考え、取りまとめることだ。


企業経営において、事業構想は無視できない頻出課題である。例えば、著者が支援させて頂いた事例を紹介しよう。


  • 事例1(既存事業の事業構想):AIの急速な社会浸透に伴い、当社のコア事業をAI時代に最適化された事業システムへと変革したい。初期的な仮説では、サプライチェーン領域の見直しを図り、一部プロセスにおいてAIを活用することで大幅な生産性向上・必要人員数の大幅縮小が可能と考えている。ついては、外部の視点も踏まえながら仮説検証及び別の事業変革切り口を模索したい。さて、どのように進めれば良いだろうか?

  • 事例2(新規事業の事業構想):2020年代以降の日本市場は人口減少等を背景に、基本的には縮小傾向にある。当社のコア事業は今のところ順調に成長しており、今後も持続可能性が高い。かかる状況下、コア事業のCF創出力を活用しながら、第二第三の当社グループの柱となる新規事業を創出したい。ついては、2020年代以降の世界情報と当社の持ち味やらしさ・ならではを0ベースで見つめ直し、当社ならではの新規事業を創出していきたいと考えている。さて、どのように進めれば良いだろうか?


ご覧頂いたように、事業構想は新規事業にのみ必要とされる訳ではない。


2025年現在、経営環境の変化(人口構造の変化・AIの社会実装加速・関税対策等)に対応すべく、既存事業の成長戦略を定めるためにも事業構想力が必要不可欠だ。




事業構想のプロセスと要諦


では、事業構想はどのように進めれば良いか?各プロセスの質を高めるために有用な問いと共に、TS&Co.の考えを紹介したい。


事業の全体像や方向性に関する現時点の仮説を可視化し、仮説を進化させる

事業構想は、仮説から始まる。すなわち、現時点で構想者・構想チームが持つ事業観に基づき仮説を可視化し、仮説を構想者の自問自答や構想チーム内のディスカッションを通じて、修正するのだ。

仮説を生み、ある程度事業案の優先順位づけを行うには、以下のような問いが有用だとTS&Co.は考えている。


  • 自社の持ち味やらしさ・ならではとなる強みと弱みは何か?

  • 自社の企業理念(ビジョン・ミッション・バリュー等)は何か?

  • 自社の定量目標は何か?

  • 自社の全社的なビジネスモデルは何か?

  • 自社の現時点の事業ポートフォリオは何か?今後、どのようなポートフォリオへと再編したいか?

  • 既存事業が参戦している競争環境及びその周辺競争環境に関連する世界情勢は何か?当該世界情勢に伴い、競合はどのような動きを取り、自社にはどのようなゲームチェンジの機会があるか?

  • 世界情勢(例えば、宇宙を視座に地球システム全体を対象にシナリオを構想)を鑑み、自社の強みが活用できる新規事業機会は何か?当該新規事業領域における想定競争戦略は何か?どの程度の事業規模を見込めるか?


優先順位の高い事業案の事業化に向け厳格に検証する

この段階ではまだ、複数の事業案が存在する。従って、前プロセスで優先順位が高いと判断された事業案(仮説)を検証していく。

事業検証には、以下のような問いが有用だとTS&Co.は考えている。


  • 現時点の世界情勢仮説はどの程度確からしいか?仮説制度をさらに高める方法はないか?

  • 事業機会が属する業界の業界KSFは何か?自社は業界KSFを満たし続けることができるか?

  • 事業機会が属する業界では現状どのような競争が行われており、自社のどのような強みを活用することで勝利できるか?

  • 市場の成長性・収益性は魅力的で今後も当該水準が見込めるか?それは、どのような時間軸・規模で進行するか?

  • 顧客の大きな需要変化等、事業機会を破壊しうる重大なリスクは何か?当該リスクに対し、事前にどのようなリスクヘッジができるか?

  • 事業機会において事業化を進めるうえでのKSFは何か?自社はDay0より、当該KSFを満たし続けることができるか?

  • 事業機会における競争戦略を定量的な事業計画に反映した結果を鑑みても、事業機会は自社にとって参入すべき機会と考えられるか?

  • 自社には、事業機会を実行し結果を出し続けられるリーダーが存在するか?当該リーダーをどのように動機づけできるか?

  • 自社に事業機会を実行し結果を出し続けられるリーダーが存在しない場合、外部より人材を採用してでも参入すべき機会と考えられるか?


事業案を絞る

厳格な検証を経て、事業案をさらに絞り込む。事業構想段階から事業計画段階への移行を可能とすべく、実務では、最低でも3案・3シナリオまでに絞り込むと良いだろう。




事業構想の本質


最後に、要するに、事業構想の本質とは何か?についてTS&Co.の考えを述べたい。


可能性・仮説であり蓋然性・真説ではない

構想は計画ではない。従って、結果を実現するための明確な行動方針は求められていない。

事業構想で求められるのは、如何に広く・深く未来の世界像を想像し、その世界の中で自社がどのような役割を担うことで顧客に選ばれ続けることができるか?を想像することだ。


同質ではなく異質

同質化された人材のみで行われる事業構想では、大量の時間を掛けたとしても想像力に限界がある。

事業構想では、異質からの別の視点を歓迎し、同質化された人材のみでは発見することができなかったであろう未来の世界像や自社が顧客に選ばれ続ける方法等を積極的に取り入れることが有効だ。


絞る

事業構想は、企業が事業を通じて顧客や社会に貢献するための手段であり、事業化に向け実行しなければ何も生まれない。また、そもそも、企業は全ての事業案を実行に移すことはできない。

従って、事業構想プロセスを通じて得られた事業案の優先順位に基づき、絞らなければならない。


環境変化の質・スピード・量が高まり続ける2025年現在の経営環境において、益々、事業構想力は必要不可欠となっている。

読者が、既存事業の成長戦略を定める時、新規事業を0から創出する時等、本論考で述べた事業構想のプロセスと要諦、事業構想の本質をご参考にして頂ければ幸いである。


必要に応じて、事業構想を推進すべく外部プロフェッショナルの起用を検討されている場合は、是非TS&Co.にお声がけ頂きたい。



著者

澤 拓磨(さわ たくま)

TS&Co.グループホールディングス株式会社 代表取締役 創業者CEO

TS&Co.株式会社 代表取締役

経営変革プロフェッショナル


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