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世界のメガトレンド―2025-2030年

  • 澤拓磨 TS&Co.代表取締役 兼 最高経営責任者(CEO)
  • 5 日前
  • 読了時間: 25分

更新日:4 日前




概要

  • 2025-2030年における世界のメガトレンドは、「1.社会のアイデンティティと行動の変容」、「2.地政学リスク」、「3.サステナビリティ経営」、「4.ブラックスワンと危機対応」、「5.デジタルトランスフォーメーション(DX)」、「6.技術革新」、「7.人口動態の変化」の7つ

  • CEOをはじめとするリーダーは、7つのメガトレンドの背景、現状、方向性を理解し、対応していかなければならない



TS&Co.グループは、2025-2030年における世界のメガトレンドは7つ存在すると考えている。そして、リスク(大・中・小)と発生時期(短期・中期・長期)の2軸で評価し優先順位をつけた(リスクが大きく、発生時期が短期であるほど優先度が高いと評価)。以降、優先順位順に紹介したい。




メガトレンド1:社会のアイデンティティと行動の変容


1つ目は、社会のアイデンティティと行動の変容だ。その背景には大きく2つの理由がある。


情報革命の進展

かつて、米国の未来学者アルビン・トフラーは、1970年発表の著書『未来の衝撃』の続編、『第三の波』(1980年)において、技術革新を農業革命、産業(工業)革命、情報革命の3つの波に例え、各革命を進める力をそれぞれ「暴力(軍事など)」、「お金」、「知恵」であると唱えた。

時が下り、2025年現在、まさにトフラーの予測が現実化している。2010年代以降、世界中で爆発的に加速した検索エンジンやSNS、スマートフォン、CPS/IoT領域などの技術革新やXRを用いた新たな仮想空間の出現に伴う情報革命の進展は、われわれのインプットとアウトプットの常識を変えた。

さらに、例えば日本では、ソーシャルメディア系サービスやアプリなどの利用率1つとっても、30 代・40 代・男性は、文字情報や画像情報を中心としたサービス(X・Facebookなど)を好み積極利用する一方、10 代・20 代・女性は動画情報を中心としたサービス(Instagram・TikTokなど)を好み積極利用するなど、年代や性別による特徴も現れている。

現実空間・仮想空間では、加速度的に進む技術革新や人々のアイデンティティと行動の変容を背景に、人間の脳で処理し切るのが不可能な規模とスピードで情報が日々創造・複製・更新され続け、世界中のあらゆる人々が情報弱者となり、断片的な情報と自身の経験、情報リテラシー、経営観などを頼りに、意見と事実、誤情報、フェイクニュース、ディスインフォメーション、ディープフェイクなどを見極め、未来を拓いていくことが求められている。


情報革命の進展は、インプットの質向上を生み、過去に類を見ない、非連続で想像を超えたアウトプットが可能になっている。そして、そうしたアウトプットをインプットした人がさらなる非連続で想像を超えたアウトプットを行うといった一連のサイクルが、VUCAといわれる「変化が激しく、経営を取り巻く環境が複雑性を増し、予期せぬ事象が発生する未来予測が困難な状態」を創り出している。こうした環境で当たり前に生きてきたソーシャルネイティブ、デジタルネイティブといわれる世代も社会で活躍し始め、社会のアイデンティティと行動の変容に拍車を掛けている。

そして、情報革命の進展により、われわれ人間にはより高い倫理観が求められるようになり、倫理観なき人が増えれば、ヘイトスピーチなどの社会課題がより顕在化していくことともなった。


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大

2019年12月31日にWHOが中国当局から原因不明の肺炎発生の報告を受けて以降、世界的な感染拡大が始まり、日本では2020年1月15日に神奈川県内で初の感染例を確認。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍では、誤情報やフェイクニュースの流布、行政とシビックテック・民間事業者との提携、プラットフォーム事業者(Facebook、Google、LinkedIn、Microsoft、X、YouTubeなど)の協力、テレワークの推進、教育・医療分野のICT活用、イベントのオンライン開催などの動きが加速した。

こうした背景のもと、現状、例えば日本では、10代・20代の若者層を中心に消費者の購買チャネルのオンライン化(ECサイトやSNSに加えプラットフォームや動画なども含む)が進行し、リモートワークとオフィスワークのハイブリッドワークを通じた組織マネジメントが求められている。

今後も、不可逆な世界の方向性として、購買チャネルのオンライン化にとどまらない種々の領域におけるオンライン化・デジタル化、ハイブリッドワークを通じた組織マネジメントなどが進行する。そして、それに伴い、セキュリティリスクの増大への対策、オンライン・デジタル領域のリテラシー向上、データの取り扱い、トラフィック増大による通信インフラへの負担、デジタル化を前提にした業務見直しなどが世界的な課題となる。 


CEOをはじめとするリーダーは、こうした背景、現状、方向性を理解し、新常態(ニューノーマル)に最適化された経営システムを構築しなければならない。



 

メガトレンド2:地政学リスク


なぜ地政学リスクが、CEOをはじめとするリーダーが認識すべき2025-2030年の世界におけるメガトレンドであるか、その背景として、ロシアによるウクライナ侵攻に起因したウクライナ危機の影響は無視できない。


ウクライナ危機の影響により、ロシア・ウクライナの国際的な資源や食料の輸出入が機能不全に陥っていることで、天然ガスや小麦の供給体制は不安定となり、世界的にインフレが進んでいる。日本のような資源輸入国や低所得国にはより強い逆風が吹いている。世界的な物価上 昇圧力の高まりにより金利は上昇傾向をたどり、世界の景気後退懸念も高止まりを見せている。

こうした影響を受け、米欧などがロシアと決別し、世界経済はブロック化、脱グローバル化に向けて動き出している。ロシアもまた、長年アジア、中南米、アフリカ諸国といった希少資源を有し急成長を続ける地域との貿易や投資を行ってきた中国と手を組み、新たな国際関係を構築すべく動き出している。


こうした背景のもと、国際的な協力関係構築に向けたさまざまな動きが行われている。

2022年10月には、ロシアのウクライナ侵攻を機に分断が深まる世界で、欧州の結束を強めることを狙いとする欧州政治共同体(EPC)の初会合が開催された。中国やロシアへの対抗軸として、欧州連合(EU)加盟 27カ国に加えて、非加盟の英国やトルコ、バルカン諸国など計44カ国が参加し、「平和・安全保障」「エネルギー・気候・経済」の2つの議題に分けて討議を行った。そして、大西洋条約機構(NATO)同盟国による、西側諸国の結束を強める動きも実を結び始めている。

また、企業経営の世界では、世界規模で事業を展開するグローバルカンパニーにおけるグローバルサプライチェーンや世界貿易システムへの懸念が一層強まっている。今後も、ロシア・ ウクライナ情勢にとどまらず地政学リスクが増していく方向性は疑いようがない。


CEOをはじめとするリーダーは、こうした背景、現状、方向性を理解し、地政学リスクに備えなければならない。




メガトレンド3:サステナビリティ経営


サステナビリティとは、「人類、地球、地球システムの持続可能性」のことであり、サ ステナビリティ経営とは、「サステナビリティを考慮した経営」のことである。


1970年代に持続可能な開発・発展の基本理念の萌芽が見られ、1987年に環境と開発に関する世界委員会が公表した報告書「Our Common Future(われら共有の未来)」のキーワード「Sustainable Development(持続可能な開発)」 としてSustainable(持続可能な)というキーワードが使われたことを契機に、1992年開催の地球サミット(環境と開発に関する国際会議)、2000年に採択されたミレニアム開発目標(MDGs: Millennium Development Goals)、2005年開催の世界社会開発サミット、2015年に採択された持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals) へと、サステナビリティという概念、言葉が世界的に浸透してきた。


では、なぜサステナビリティ経営が、CEOをはじめとするリーダーが認識すべき2025-2030年の世界におけるメガトレンドであるか、その背景には、大きく3つの理由がある。 


公的機関からの要請

1970年代に持続可能な開発・発展の基本理念の萌芽が見られ、1992年の地球サミット、2000年のミレニアム開発目標(MDGs)、2005年の世界社会開発サミット、2015年の持続可能な開発目標(SDGs)とサステナビリティという言葉が世界的に浸透してきた。

現在、2015年に国連サミットにより採択された持続可能な開発目標(SDGs)をはじめ、国連グローバル・コンパクト、締約国会議(COP)、日本政府による2050年カーボンニュートラル宣言等を代表例とし、公的機関からの要請が高まっている。


消費市場・労働市場からの要請

例えば、スーパーに陳列されている各種商品のうち、環境に配慮した商品の売れ行きが好調となる等、消費市場からの要請が高まっている。また、例えば、20代・30代の世代は、社会課題の解決への意識が驚くほど高く、サステナビリティ経営がなされているか否かで就職先を選ぶ等、労働市場からも要請を受けている。


サステナブル投資の進展

サステナブル投資とは、ESG等サステナビリティの観点から投じられる投資資金のことであり、2006年に国連が提唱した責任投資原則(PRI=Principles for Responsible Investment)をきっかけに本格的に普及した。

NPO法人・日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)の調査によると、2021年の機関投資家の運用総額に占めるサステナブル投資の比率は61.5%まで上昇している。サステナビリティ経営(サステナビリティを考慮した経営)がなされていない企業は、機関投資家のポートフォリオから外され、資本市場から必要資金を調達することが難しくなっている。また、サステナビリティ開示基準の整備も進展している等、サステナブル投資の進展は著しい。


サステナビリティ経営は、揺るぎない、世界の大きな方向性への貢献であり、今後も継続的な取り組みが求められている。

CEOをはじめとするリーダーは、こうした背景、現状、方向性を理解し、サステナビリティ経営を実践しなければならない。  




メガトレンド4:ブラックスワンと危機対応


なぜブラックスワンと危機対応が、CEOをはじめとするリーダーが認識すべき2025-2030年の世界におけるメガトレンドであるか、その背景には歴史からの教訓がある。

恐竜絶滅の経緯(大規模火山活動や天体衝突により雨が多く降ったためといわれる)や過去に人類が直面してきた危機の歴史を振り返れば、いつの時代もブラックスワンや予期せぬ危機への対応を、CEOをはじめとするリーダーは無視できないことは自明の理だ。


例えば、過去数100年の間にも


  • 富士山大噴火・・・1707年、日本

  • ジャガイモ飢饉・・・1845-1849年、欧州全土


などの天変地異


  • ペスト・・・17-18世紀、欧州

  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍・・・2019年〜、全世界


などの疫病とパンデミック


  • 第1次世界大戦・・・1914-1918年、欧州全土

  • 第2次世界大戦・・・1939-1945年、全世界

  • ウクライナ侵攻・・・2022年、ロシア、ウクライナ


などの紛争や戦争


  • 世界大恐慌・・・1929年、米国

  • オイルショック・・・1973・1979年、全世界

  • バブル崩壊・・・1991-1993年、日本

  • リーマン・ショック・・・2008年、米国


などの経済危機が起こった。われわれ人類には突如として発生するブラックスワンや危機への対応が今後も求められることは自明である。そして、その対応を怠れば、甚大な被害を受けることとなる。


従ってCEOをはじめとするリーダーは、予想や想像を超えたブラックスワンと危機を所与のものとし、事業継続計画(BCP: Business Continuity Planning)などを事前に準備し、ブラックスワンや危機に対応しなければならない。




メガトレンド5:デジタルトランスフォーメーション(DX)


なぜデジタルトランスフォーメーション(DX)が、CEOをはじめとするリーダーが認識すべき2025-2030の世界におけるメガトレンドであるか、その背景には、大きく2つ理由がある。


社会全体からのニーズ

DXとは、2004年にスウェーデンのウメオ大学エリック・ストルターマン教授により提唱された概念で、「ITの浸透により人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」であるが、情報革命の進展に始まり、社会全体においてITを活用した生活の利便性向上へのニーズが増加し続けている。


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が感染拡大することにより、強制的に、改めて世界中でITの有用性が見直され、生活のあらゆる面でI Tの浸透スピードが加速した。  

こうした背景のもと、現状、種々の領域においてDXが進められている。企業経営の世界では、DXが以下の浸透ステップで進められている。  


  • Digitalization(デジタライゼーション):社内(ビジネスモデル全体の一新など)だけでなく社外(クライアントやパートナーなど)も含め、自社の競争力を高めるためにプロセス全体をデジタル化すること

  • Digitization(デジタイゼーション):ある工程で効率化のためにデジタルツールを導入するといった特定部分をデジタル化(既存の紙のプロセスを自動化するなど物質的な情報をデジタル形式に変換)すること

  • Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション):企業が外部環境(顧客、市場など)の劇的な変化に対応しつつ、内部環境(組織、文化、従業員など)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、 モビリティ、ビッグデータ、ソーシャル技術など)を利用し、新しい製品やサービス、ビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面における顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること。自社の競争力を高めるためだけでなく、業界全体や社会、従業員など、あらゆる対象に良い影響を生み出す。


また、日本では、日本企業の国際競争力を高めデジタル企業への変革を促すことを目的に、経済産業省より、DX推進の成熟度に関する6段階評価と成熟度向上に向けた改善の方向性が詳細に示されている。


今後も、領域や組織により進行度は異なるが、不可逆な方向性としてDX進行が加速していくと考えている。

CEOをはじめとするリーダーは、こうした背景、現状、方向性を理解し、デジタルトラ ンスフォーメーションを進めなければならない。




メガトレンド6:技術革新


なぜ技術革新が、CEOをはじめとするリーダーが認識すべき2025-2030年の世界におけるメガトレンドであるか、その背景には、大きく2つ理由がある。


研究開発投資の増加

主要国の研究開発投資総額の推移を見ると、米国、中国を中心に2000年以降増加傾向にある。次に、企業部門の研究開発投資を国別に見ると、米国企業は1980年代以降世界No.1の規模を維持し、日本企業は2009年に減少を示すも漸増傾向、中国企業は2000年代以降急激に増加、2012年にEUを上回り、2017年には米国企業に迫る勢いで規模を拡大している。

なお、米国企業GAFAと主要日本企業3社(トヨタ自動車、ソニーグループ、日立製作所)の研究開発費と売上高研究開発比率を比較すると、いずれもGAFAが主要日本企業3社を上回っていることは有名な話である。

こうした事実が示す通り、米国企業、中国企業はさることながら、日本企業をはじめ他の国の企業も競争力を維持・強化するため、さらなる研究開発投資を行うことが予測される。


人類の飽くなきフロンティア開拓

2025-2030年は、宇宙開拓、仮想空間(メタバースなど)、第6世代携帯電話(6G)、深海探索などの分野でフロンティアの開拓が進むと考えられている。

例えば、宇宙開拓分野では木星探査機JUICEが木星系軌道へ到達、仮想空間分野ではメタバース関連市場が2020年比20倍弱の8,289億5,000万ドル規模に拡大(Emergen Research)、第6世代携帯電話(6G)分野では1,000倍近い高速化の実現により大量の情報伝達を可能にし、スマートフォンによる人と人のコミュニケーションだけでなく都市インフラ・AIと人間など多様な対象間で接続がなされた都市・産業・社会の神経ネットワークを実現することで、スマートシティやスマートモビリティが進展、深海探索分野では清水建設が深海都市構想「オーシャンスパイラル」の2030年完成を目指すなど、人類の飽くなきフロンティア開拓に向けた取り組みが加速している。


背景で示したこれらの動きは、現状もその傾向に変わりはない。世界中の種々の官民組織において、それぞれ研究開発投資が進められている。今後も、研究開発投資の増加は不可逆な方向性として継続・加速していくであろう。


CEOをはじめとするリーダーは、こうした背景、現状、方向性を理解し、自らの競争力を高めるため、研究開発投資に経営資源を差配し、日進月歩で進化し続ける技術革新を経営に活かしていかなければならない。




メガトレンド7:人口動態の変化


なぜ人口動態の変化がCEOをはじめとするリーダーが認識すべき2025-2030年の世界におけるメガトレンドであるか、その背景として、英国の経済学者アンガス・マディソンが公表したデータがある。


当該データによると、世界の重心移動は50年で可能であり、2030年にかけて中南アジア(中国・インドなど)への重心移動が顕著であることが読み取れる。当該データは、2022年7月11日の世界人口デーに合わせて国連経済社会局(UNDESA)人口部が公表した「World Population Prospects 2022(世界人口推計2022年版)」などに掲載されたデータだ。


以下にその内容を要約した。


  • 世界人口は2019年の推計より早まり、2022年11月15日に80億人に到達する見込み。2058年に約100億人に増加した後、2080年代に約104億人でピークに達し、2100年までその水準が維持される。なお2023年には、インドが中 国を抜いて世界で最も人口の多い国となる。

  • 2022年から2050年の間に61の国・地域の人口が1%以上減少、人口が減少する国は近年増え続けている。

  • 国際的な人口移動は、一部の国の人口動態に大きな影響を与えている。例えば、高所得国では、2000年から2020年の移民の流入による人口増加(8,050万人の純流入)が出生数と死亡数の差(6,620万人)を上回る。

  • 高齢者人口は、人数及び世界の総人口に占める割合においても増加。ただし、世界の平均余命は延び続けているものの、2021年時点において、発展途上国の平均余命は世界平均より7歳下回っているなど、地域間の格差は依然として残る。

  • パンデミック(新型コロナウイルス感染症〈COVID-19〉)は、人口変動の要因である3つの要素(世界平均余命、出生率、人口移動)すべてに影響を及ぼした。


2004年に、オーストリアの人口統計学者ウォルフガング・ルッツは、「20世紀が人口増加の世紀(世界人口は1900年の16億人から2000年には61億人へ)であったとすれば、21世紀は世界人口増加の終焉と高齢化の世紀となるだろう」と述べたが、2025-2030年において既にその予兆が示唆されている。


こうした背景のもと、現状、世界人口が中南アジア(インド・インドネシア)、アフリカ諸国を中心に増加し続けていること、出生率が高い地域では若い人口構造を維持するものの世界的に高齢化が進行し高齢者人口が増加し続けていることに伴い、新たな経営機会が出現してきていることをCEOをはじめとするリーダーは認識すべきである。


今後も、人口動態の変化は進行していくだろう。そして、日本においても、生産年齢人口の減少、人手不足(トラックの運転手、レストランのウエーター、銀行員、コンサルタントなど)が不可逆な方向性となって、課題が顕在化していくこととなる。


CEOをはじめとするリーダーは、こうした背景、現状、方向性を理解し、人口動態の変化に対応していくべく、 ハイパーグローバリゼーション(1990年代後半から2000年代初頭まで政治・経済・社会といったあらゆる領域で急激に進んだ「特定のグロー バリゼーション」。トルコ生まれの経済学者で米ハーバード大学ケネディ行政大学院国際政治経済学教授のダニ・ ロドリック氏が定義)は減速したといえども、グローバリゼーションを視野に、経営戦略を構想していかなければならない。



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※グローバル=世界全体、APAC(Asia-Pacific)=アジア太平洋、Americas=南北アメリカ大陸、EMEA(Europe, the Middle East and Africa)=欧州、中東、アフリカ


政治

【グローバル】

  • 持続可能な開発目標(SDGs)の達成期限を迎える(国連)2030年

  • 最終エネルギー消費に占める電力比率が2020年20%から22%超へ(国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency))─2030年

【APAC】

日本:

  • 日本の普通国債残高がGDPの2倍の規模に当たる1,000兆円突破(財務省)─2023年

  • 年間死亡者数が150万人を超え高齢多死社会を迎える(『東大がつくった高齢社会の教科書』東京大学出版会)─2025年

  • 「2025年問題(医療費増大など)」を解決するため国家として健康増進に取り組む(厚労省)─2025年

  • 厚生年金支給開始年齢の段階的引き上げ完了(厚労省)─2030年

  • 国・地方公共団体が保有する設置可能な建築物などの約50%に太陽光発電設備導入(環境省)─2030年

  • 総合食糧自給率が生産額ベースで2018年66%から75%へ(農林水産省)─2030年

  • EV向け急速充電器3万基に、燃料電池車(普及台数80万台程度)用水素ステーションが1,000基程度に(経済産業省)─2030年

  • エネルギーミックスにおける石炭火力比率が2020年32%から26%に(経済産業省)─2030年

  • 原発電源比率20-22%、再生可能エネルギー電源比率36-38%(経済産業省)─2030年

中国:

  • 世界一の経済大国となり中間層4億人が爆消費(英国エコノミスト誌)─2024年

  • 「中国製造2025」達成に向け技術革新の継続加速(経済産業省)─2025年

【Americas】

米国:

  • ロサンゼルスで第34回夏季オリンピック・第18回夏季パラリンピック開催(国際オリンピック委員会(IOC))─2028年

  • 温暖化ガスの実質的排出を2005年比50-52%削減(米国政府)─2030年

【EMEA】

欧州連合(EU):温暖化ガスの実質的排出を1990年比最低55%削減(欧州委員会)─2030年

スウェーデン:年金支給開始年齢を64歳に引き上げ(スウェーデン政府)─2026年

スペイン:年金支給開始年齢を67歳に引き上げ(スペイン政府)─2027年

イギリス:   年金受給資格年齢が67歳に引き上げ(イギリス政府)─2028年

 

経済

【グローバル】

  • 法人税最低税率を15%に共通化。世界136カ国、地域の多国籍企業にデジタル課税導入(経済協力開発機構(OECD))─2023年

  • 世界人口増加に伴う未来の水不足を背景に、淡水化技術や太陽光により空気から水を取り出す装置の開発事業などの市場規模が100兆円に(『日本&世界の未来年表』PHP研究所)─2025年

  • メタバース関連市場が2020年比20倍弱の8,289億5,000万ドル規模に拡大(Emergen Research)─2028年

  • 世界の業務用ドローン市場規模が2015年約30億円から1,000億円に(日経BPクリーンテック研究所)─2029年

  • 世界の信用格付けソフトウェア市場規模は2020年に4億2,000万米ドル、2021年から2030年にかけて16.5%の年平均成長率(CAGR)で成長し、2030年には19億2,000万米ドル規模に達する(グローバルインフォメーション)─2030年

  • 世界のイベント市場規模が2019年143兆円以降11.2%の年平均成長率(CAGR)で成長し2028年には195兆円に(Allied Market Research)─2030年

  • 2030年に再生医療周辺産業の世界市場規模は5.2兆円に(経済産業省商務・サービスグループ生物化学産業課)─2030年

【APAC】

アジア:

  • 保有資産100万ドル以上の富裕層が中国・アジア太平洋で2019年比で1.5倍。欧州を上まわる(クレディ・スイス)─2024年

日本:

  • 情報(決済情報)銀行が続々と誕生(『お金の未来年表』SB新書)─2023年

  • 電子決済の市場規模が2017年の1.5倍超の114兆円に拡大(野村総合研究所(NRI))─2023年

  • デジタルマネーを通じた給与支払いが可能に(厚生労働省)─2023年

  • 2025年度の食料自給率を供給熱量ベースで45%・生産額ベースで73%に。畜産物自給率に大きく影響を与える飼料自給率を40%に(農林水産省)─2025年

  • キャッシュレス決済比率を2025年までに4割程度、将来的には世界最高水準の80%を目指す(経済産業省商務・サービスグループキャッシュレス推進室)─2025年

  • 仮想通貨による国際送金が当たり前に(『お金の未来年表』SB新書)─2025年

  • ロボット関連産業の国内の市場規模7兆円(経済産業省)─2025年

  • ゲーム市場規模1兆9,309億円(野村総合研究所(NRI))─2027年

  • シェアリングエコノミー市場規模が14兆2,799億円に(一般社団法人シェアリングエコノミー協会/情報通信総合研究所)─2030年

  • 世界のデジタルトランスフォーメーション(DX)市場の売上高は、2021年から2030年の予測期間中23.5%の年平均成長率(CAGR)で成長し、2030年には1兆8,900億ドルに(Panorama Data Insights)─2030年

  • 地方創生。百貨店、銀行なども地方から消え、地域社会との価値共創が求められる(『未来の年表』講談社現代新書)─2030年

  • 誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位に ある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指す。ウーマノミクスの推進、柔軟な働き方や多様で複線的なキャリアが実現する社会づくり、社会全体の生産性・ワークライフバランス・M字カーブ改善、出生率回復を企図(内閣府)─2030年

  • サーキュラーエコノミー関連市場80兆円以上に(日本経済再生本部)─2030年

中国:中国の都市化率(総人口に占める都市人口の比率)は2019年60.6%と日本や韓国などと比べまだ低い水準から2030年に70.0%前後まで上昇(ニッセイ基礎研究所)─2030年

インド:eコマース市場が2,000億ドル規模に成長(日本貿易振興機構(JETRO))─2026年

【Americas】

米国:新車販売に占める無排出車(ゼロエミッション車:ZEV)の割合を2026年式モデルでは35%、2030年式では68%に(米国カリフォルニア州大気資源委員会(CARB))─2030年

南米:ブラジル、メキシコなどが中央銀行デジタル通貨(CBDC)導入(ブラジル政府、メキシコ政府)─2024年

【EMEA】

EU:

  • EU圏内で販売する乗用車のCO2排出量を2021年比で37.5%削減(欧州委員会)─2030年

  • EU域内で使用される全てのプラスチック製包装材は再生利用可能なものに(EU)─2030年

イギリス:ガソリン車・ディーゼル車の販売禁止(イギリス政府)─2030年

 

社会

【グローバル】

  • 世界の中間層が49億人(2014年比2.5倍)に。うち64%を中国・インド・インドネシアなどアジア諸国が占める(米国オグルヴィ・アンド・メイザー「VELOCITY12」)─2030年

  • 世界の食糧需要が55%増加。食糧増産のための水需要膨らむ(国連世界水開発報告書)─2030年

  • 石油需要が2020年日量8,790万バレルから1億300万バレルに(国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency))─2030年

【APAC】

日本:

  • オンライン診療定着(厚労省)─2023年

  • 築30年以上の老朽マンションが447万戸に(国交省)─2023年

  • 初の本格的認知症薬誕生(『未来の医療年表 10年後の病気と健康のこと』講談社現代新書)─2025年

  • 65歳以上の認知症患者数が約700万人に増加(厚労省「新オレンジプラン」)─2025年

  • 予算ベースの医療費が54.9兆円に(財務省)─2025年

  • リニア中央新幹線東京〜名古屋間が開通(『日本&世界の未来年表』PHP研究所)─2027年

  • 人口減少に対応しTAコンパクトなインフラ計画による自然共生型の縮小市街地登場(文科省科学技術・学術政策研究所)─2027年

  • 全国の空き家率が23.7%に高まる(富士通総研経済研究所)─2028年

  • 民放AMラジオ44局が放送停止。FM放送へ転換(ワイドFM(FM補完放送)対応端末普及を目指す連絡会)─2028年

  • 生産年齢人口が7,000万人を割る(国立社会保障・人口問題研究所(IPSS))─2029年

  • 羽田空港アクセス線開業(JR東日本)─2029年

  • 世帯主75歳以上の7割近くが単身か夫婦のみの世帯、年間死亡数が160万人と2016年より30万人増加(国立社会保障・人口問題研究所(IPSS))─2030年

  • 50代、60代の中高年男性のほぼ4人に1人が未婚、50代女性の5人に1人が未婚に(内閣府)─2030年

  • 生産性向上と女性・シニア・外国人就労者増がない場合、約600万人の労働力不足に陥る(『日本&世界の未来年表』PHP研究所)─2030年

  • 北海道新幹線が全線=新函館北斗-札幌間開業(鉄道・運輸機構)─2030年

  • 築40年超高経年マンション2020年103.3万戸から231.9万戸に(国交省)─2030年

  • 北海道の市町村の約8割が財政赤字となる(『北海道2030年の未来像:「人口減少100万人」を超えて』日経BPマーケティング)─2030年

  • AI診療が主流に(『未来の医療年表 10年後の病気と健康のこと』講談社現代新書)─2030年

中国:

  • 中間層4億人が国内外で爆消費(『未来の中国年表』講談社)─2023年

  • 年間1,200万人離婚時代到来(『未来の中国年表 超高齢大国でこれから起こること』講談社現代新書)─2024年

インド:

  • 人口で中国を抜き世界1位に(国連)─2028年

  • 生産年齢人口で中国を抜き世界1位に(国連)─2030年

韓国:平均寿命男性84.1歳、女性90.8歳と世界一の長寿国に(世界保健機関(WHO))─2029年

【Americas】

米国:

  • 米国におけるSTEM人材の開発、イノベーションの地理的拡大、グローバルな科学工学コミュニティーの育成を推進(国立科学財団(NSF)審議機関国家科学審議会(National Science Board: NSB))─2030年

  • 2020年(国政選挙当時)に有権者に占めるLGBTQ(性的少数者)の割合は約10.8%だったが、2030年までに14.3%、2040年までに17.8%に上昇する(米国国勢調査データ)─2030年

【EMEA】

デンマーク:キャッシュレス化推進により、通貨デンマーク・クローネを発行停止(『日本&世界の未来年表』PHP研究所)─2030年

アフリカ:

  • 世界人口の17.2%へ。富裕層の数が伸びGDP成長も堅調(内閣府)─2029年

  • 2030年までにアフリカの18歳未満の子どもの人口は7億5,000万人に達する。投資すべき3つの重点課題として、①保健ケア(420万人の新期保健従事者の訓練)、②教育(580万人の新期教員の訓練)、③女性及び女子の保護とエンパワーメントを挙げる(ユニセフ報告書『2030年世代アフリカ 2.0』)


技術

【グローバル】

  • 米国のアルテミス計画の実行により人類再び月面着陸(NASA(米国航空宇宙局))─2025年

  • 木星探査機JUICEが木星系軌道に到達(欧州宇宙機関(ESA))─2029年

  • 人類火星に到着、「ジュース」木星に到着(欧州宇宙機関(ESA))─2030年

  • 第6世代携帯電話(6G)開始。1,000倍近い高速化、遠隔操縦などを前提にした同期技術、カーボンニュートラルを意識した大規模な省エネルギー対応、スマートフォンによる人と人のコミュニケーションだけでなく都市インフラ・AIと人間などの多様な接続対象間の接続がなされた都市・産業・社会の神経ネットワークを実現。スマートシティ、モビリティ領域などが進展(Brooklyn 6G Summit)─2030年

【APAC】

日本:

  • 2025年に農業の担い手のほぼすべてがデータ(耕作地にセンサー取付け、オンライン管理など)やロボットを活用した農業を実践するスマート農業化へ(農林水産省)─2025年

  • 本田技研工業がレベル4の自動運転実用化(『日本&世界の未来年表』PHP研究所)─2025年

  • SNSなどの更なる普及によりライフログを簡単に公開可能に(『未来の稼ぎ方 ビジネス年表2019-2038』幻冬舎新書)─2026年

  • 素粒子ニュートリノをとらえる観測装置ハイパーカミオカンデが岐阜県飛騨市にて稼動(東大宇宙線研究所)─2026年

  • 自動運転トラクタによる無人農業、IoTを活用した精密農業の普及(文科省科学技術学術政策研究所)─2027年

  • コンクリート構造物(橋梁)の組立てなど危険が伴う作業をユニット化により無人化(文科省科学技術学術政策研究所)─2027年

  • 無人バスの国内ルートカバー率10%に到達(野村総合研究所(NRI))─2028年

  • 定期貨物便向け無人飛行機の商用化開始(野村総合研究所(NRI))─2028年

  • 先進レーダ衛生ALOS-4の後継機打ち上げ(経済産業省)─2028年

  • 信頼性、大容量、低遅延、多数端末などの条件を複数満足する移動通信技術が実現(文科省科学技術学術政策研究所)─2028年

  • 次世代高速通信規格「6G」商用化(NTTドコモ)─2028年

  • 気象衛星ひまわりの後継機が運用開始(内閣府)─2029年

  • 火星衛生の無人探査機が地球帰還(宇宙航空研究開発機構(JAXA))─2029年

  • 血液によるがんや認知症の早期診断・病態モニタリング(文科省科学技術学術政策研究所)─2029年

  • 画像認識と音声認識が融合したあらゆる言語のリアルタイム自動翻訳 (文科省科学技術学術政策研究所)─2029年

  • 匠(熟練技能者など)の技能計測とモデリングで暗黙知を自動的にアーカイブ化するシステム実現(文科省科学技術学術政策研究所)─2029年

  • 遠隔で認知症などの治療や介護が可能になる超分散ホスピタルシステム実現(文科省科学技術学術政策研究所)─2030年

  • 人工衛星等を活用したリアルタイムの高空間・高時間解像度気象予測と災害リスク評価システム実現(文科省科学技術学術政策研究所)─2030年

  • 有人月面探査実現(宇宙航空研究開発機構(JAXA))─2030年

  • 再使用型ロケット打ち上げ(文部科学省)─2030年

  • 清水建設が深海都市構想「オーシャンスパイラル」2030年完成目指す(清水建設)─2030年

  • 2030年までに津波警報を発表した後で津波の第一波・最大波から減衰まで、津波の時間的推移を提供するとともに、警報・注意報解除の見通しをお知らせする技術、天文潮位も考慮した津波の高さの予測を実施する技術の開発を目指す(気象庁地震火山部地震津波監視課)─2030年

中国:月面基地建設(中国国家宇宙局)─2030年

【Americas】

米国:ハワイ島マウナケア山頂に直径30メートルの超大型望遠鏡「TMT」完成(米国ハワイ島)─2027年

【EMEA】

ロシア:2030年までに有人月周回飛行及び月着陸を実施。その準備として複数の無人月探査で欧州との協力検討。2021年には欧州と協力して南極域探査を計画(ロシア政府)─2030年

南アフリカ:既に国民IDが導入されており、今後2030年までに全国民の登録及びIDカードの電子化を目指す。パスポート申請、銀行口座開設など様々な政府関連サービスなどにオンラインでアクセスすることにより国民IDを活用した新たな関連ビジネス創出を目指す─2030年


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著者

澤 拓磨(さわ たくま)

TS&Co.グループホールディングス株式会社 代表取締役 創業者CEO

TS&Co.株式会社 代表取締役

経営変革プロフェッショナル


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