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CEOの洞察力と企業の浮沈

  • 澤拓磨 TS&Co.代表取締役 兼 最高経営責任者(CEO)
  • 4月17日
  • 読了時間: 5分

更新日:4月21日




概要

  • 現代の経営環境において、特に重要となるのが洞察(インサイト)

  • 洞察の価値は、考察、推察、判断、決断、明示・示唆といった関連用語と共にみていくと理解しやすい

  • 現代の経営環境で洞察を理由に差が生じうるのは、「顧客・自社・競合間の情報の非対称性が低下し、経験・現実・熟慮から得た本質からのみ競争優位が生まれる」、「顧客の本意を掴みづらい」、「情報量の増加に伴い因果関係が見えづらい」、「経営資本は有限」なため

  • 洞察創出の要諦は、「「観」を創る、進化させる」、「思考回数を増やす、思考を可視化する」、「実行し洞察を検証・進化させ続ける」の3つ。出発点は「観」を創ること




CEOの洞察力が企業の浮沈を分ける時代


2020年代中盤以降は、益々、情報取得コストが下がり情報を保有すること自体の価値も下がり続け、むしろ不要な情報を保有することが自社のケイパビリティ(模倣できない時間当たり行動の質・スピード・量・コスト)を著しく低下させる主因となりうる。


こうした現代の経営環境において、特に重要となるのが洞察だ。


では、洞察とは何か。洞察の価値をご理解頂くために有用なため、関連する用語と共に整理したい。


  • 考察:物事をよく調べ仮説を立てること

  • 推察:考察で得た仮説に対し推論すること

  • 洞察:推察から本質を抽出すること

  • 判断:推察・洞察結果をもとに考えを定めること、その考え

  • 決断:考えを意志に基づき、決め・断つこと

  • 明示・示唆:(直接的・間接的に)考えを伝えること


現代の経営環境で洞察を理由に差が生じうるのは、以下のような理由が考えられる。


顧客・自社・競合間の情報の非対称性が低下し、経験・現実・熟慮から得た本質からのみ競争優位が生まれる

相当希少な会員制コミュニティからのみ得られる情報でない限り、情報を保有すること自体で顧客に選ばれ・選ばれ続けることは難しい。

顧客に選ばれ続けるためには、経験・現実・熟慮から得た本質をもとに、経営を思考し続けるしかない。


顧客の本意を掴みづらい

企業が顧客の本意を掴むには、直接対話することが最も有効だが、そう簡単に直接対話させて頂く機会を頂戴できる訳ではない。

直接の対話の代替手段として、顧客のSNS等の発信情報をもとにお考えを考察しようとしても、そもそもSNS等に発信している情報はどこまで信憑性があるのか疑問が残る。

さらに厄介なことに、現代の経営環境における情報流通スピードを鑑みれば、掴んでいたはずの顧客の本意は瞬く間に変化する。

従って、常に洞察的視点で顧客の本意を読む姿勢が強く求められている。


情報量の増加に伴い因果関係が見えづらい

情報量が多ければ、結果と原因の因果関係が見えづらくなり、戦略・計画立案及び決断の難易度が高まる。ましてや、洞察を得ることは尚のこと難しい。

従って、例えば、洞察力が強みのCEOが経営する会社と洞察力が弱みのCEOが経営する会社では、戦略・計画精度と決断力に大きな差が生じ、結果、パフォーマンスにも大きな差が生じる。


経営資本は有限

もし経営資本が無限にあれば、思考し行動案や優先順位を決断する必要はない。しかしながら、世界中の全企業の経営資本は有限だ。

そのため、経営資本を有効活用しながら各社は競争に参加する必要があり、洞察に基づき経営資本を効果的・効率的に配分できる企業が競争優位を確立しやすい。


まさに、CEOの洞察力が企業の浮沈を分ける時代だ。




洞察創出の要諦


では、どうすれば洞察を創出できるだろうか。洞察創出の要諦について、TS&Co.の考えを述べたい。


「観」を創る、進化させる

CEOが得たい洞察とは、経営全体を思考対象とした洞察だろう。

そうした洞察を得るための思考は、CEOがこれまで生きてきた中で得た経験や書籍等より得た知識により創られる世界観、自分観、経営観といった「観」が土台となる。「観」に基づき、例えば、経営の未来を考察・推察しその中から本質を抽出していくのだ。

尚、「観」は創って終わりではない。むしろ、創ることは出発点に過ぎない。CEOは、自らの経営経験を通じ得た様々な想い出や教訓をもとに「観」を進化させることで、よりパフォーマンス最大化に寄与する洞察を得られるようになるだろう。


思考回数を増やす、思考を可視化する

たとえ素晴らしい「観」を持ち思考してるつもりになっていても、それだけでは足りない。よりパフォーマンス最大化に寄与する洞察を得るためには、思考回数を増やす意志が必要だ。

著者自身も日々痛感しているが、人間の思考体力や集中力は有限で、生活を維持するためにも一度に取れる思考時間には限界がある。従って、思考回数を増やし累積思考量を増加させることが、よりパフォーマンス最大化に寄与する洞察を得るために必要不可欠だと考えている。

尚、こうした思考は、思考を紙やホワイトボード等に可視化し、論理と論理の関係性を確認しながら、いつでも論理を結合できる環境で行うと洞察創出力が高まるはずだ。


実行し洞察を検証・進化させ続ける

洞察に基づき立案・決断された戦略・計画を実行し、その結果を通じて洞察を検証することで、洞察をよりパフォーマンス最大化に寄与する洞察へと進化させることができる。

実行無くして、真の洞察にたどり着くことはないだろう。


CEOの洞察力が企業の浮沈を分ける時代において、飛躍する企業が1社でも増えることを切に願い、本論考を終えたい。



著者

澤 拓磨(さわ たくま)

TS&Co.グループホールディングス株式会社 代表取締役 創業者CEO

TS&Co.株式会社 代表取締役

経営変革プロフェッショナル


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