危機に飛躍か低迷か
- 澤拓磨 TS&Co.代表取締役 兼 最高経営責任者(CEO)
- 4月15日
- 読了時間: 5分
更新日:5 日前
概要
危機とは、未来に悪い結果をもたらす可能性が高い状況を指す
経営は常に認識しているか認識していないかに関わらず、大小様々な危機と対峙しており、CEOは危機への対応を無視することはできない
危機に飛躍するためにCEOが発揮すべき有事のリーダーシップの要諦は、「好機に危機へ備える」、「0ベースで自社の経営を再定義・決断し方向性を示す」、「率先垂範し仮説検証サイクルを高速回転させる」
特に重要なのは、人の備え。結局のところ、企業を動かすのは人であり、危機時のヒーロー出現にすがるのは賢明なCEOの姿とは言えない。CEOには、危機を機会と捉え、虎視眈々と危機を待つ姿勢が求められる
危機に飛躍するか、低迷するか。CEO次第だ
経営における危機
危機とは、未来に悪い結果をもたらす可能性が高い状況を指す。
では、経営における危機とは何か。例えば、以下のような状況を指す。
米国トランプ政権による各国への関税政策とそれに対する各国の報復関税の動向を受け、自社事業の立地戦略変更やサプライチェーン変革を検討しなければならない。現状、各国の政策は、自国以外の動向を受け時に数日で変更される状況のためできれば様子をみたい。しかしながら、その場合、この状況を機会と認識した競合の後塵を拝すことになるかも知れない。さて、どのように対応すべきだろうか?
米中をはじめとする各国が競い合いながら急速に進むAIの社会実装に伴い、自社のビジネスモデルのどの部分を変え、データを蓄積していくべきだろうか?それに伴う仕事の質的変化を鑑みた、最適な組織体制や人材要件とはどのようなものだろうか?遅くとも2030年にはwith AI時代となると考えられるが、2030年までに自社をwith AI時代に最適化された企業へと変革できるだろうか?さて、どのように対応すべきだろうか?
中国武漢を起源とする100 年に1度の感染症COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響により、顧客需要の大幅減少や働き方の抜本的な変革が必要となる等、これまでの延長線上にはない経営へと経営変革しなければならない。突然のことで備えがない状況だが、感染症の影響が今後どの程度の期間にわたり持続するかも不透明な状況で、どこまで思い切った投資・変革をすべきだろうか?さて、どのように対応すべきだろうか?
ここでは、2025年4月時点において読者に馴染み深いであろう事例を挙げた。
しかしながら、経営は常に認識しているか認識していないかに関わらず、大小様々な危機と対峙しており、CEOは危機への対応を無視することはできない。
危機に飛躍するためにCEOは何をすべきか?
危機時のリーダーシップは、好機のリーダーシップと異なり、CEO以外の従業員等に不安や恐怖が募った状態で発揮される。
こうした有事のリーダーシップにおける要諦とは何か。TS&Co.の考えを紹介したい。
好機に危機へ備える
危機と対峙しない経営は、余程の例外を除いて(1年間の時限性組織等)存在しない。また、人も企業も、備えなしに余裕を持って危機を突破することはできない。従って、比較的余裕のある好機に危機への備えを十分に行っておくことが重要だ。
例えば、企業の場合は、危機時の情報流通・管理方法、危機時の対応マニュアル整備やレジリエンス(回復力)の高い人材の育成、危機に強いサプライチェーンの構築、危機時の突発的支出に耐えうる強い財務基盤の構築等が考えられる。
そして、より重要なのは、人の備えだ。結局のところ、企業を動かすのは人であり、競合の動向に足並みを揃える横並び意識や危機時のヒーロー出現にすがるのは賢明なCEOの姿とは言えない。
CEOには、危機を機会と捉え、虎視眈々と危機を待つ姿勢が求められる。
0ベースで自社の経営を再定義・決断し方向性を示す
危機とはいえ、今日・明日に方向性を示せなければ環境に淘汰される訳ではない。従って、危機を好機と捉え、この機会に0ベースで自社の経営を再定義する。
多くの場合、0ベースで自社の経営を再定義する作業を通じて、今何を決断すべきかが明確となり、決断も容易となる。そして、決断した方向性をステークホルダーに示すのだ。
率先垂範し仮説検証サイクルを高速回転させる
CEO以外の従業員等は、不安や恐怖を募らせ、CEOが方向性と模範を示してくれることを待っている。
従って、CEOが誰よりも早く方向性に沿った行動を開始して、従業員等の不安や恐怖を解消し、組織一丸となって危機を乗り越えていくのである。
危機に際してCEOが示した方向性は正解ではなく、あくまで仮説だ。
従って、仮説に基づき行動し、その結果と原因を検証して仮説を修正しながら前進する、すなわち、仮説検証サイクルを高速回転させることが有効だ。
著者自身、実体験から、危機は飛躍の千載一遇の機会だと考えている。
著者がTS&Co.グループを創業したのは2020年8月であり、創業準備は2020年3月より開始した。
当時の世界は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響により危機を迎えていたが、結果的に、著者にとっては危機が飛躍の契機となった。
危機に飛躍するか、低迷するか。CEO次第だ。
著者
澤 拓磨(さわ たくま)
TS&Co.グループホールディングス株式会社 代表取締役 創業者CEO
TS&Co.株式会社 代表取締役
経営変革プロフェッショナル
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