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中期経営計画

  • 澤拓磨 TS&Co.代表取締役 兼 最高経営責任者(CEO)
  • 4月30日
  • 読了時間: 6分



概要

  • 日本の上場企業の8割が策定しているといわれるが、信越化学工業、伊藤忠商事、味の素等、独自の経営観のもと中期経営計画を廃止・不要と考える企業も存在

  • TS&Co.は中期経営計画は必要不可欠だと考えている。なぜならば、中期経営計画は、企業経営において対外・対内的な価値を持ち、問題点を上回る価値を持つと考えるため

  • 対外・対内的な価値は、「外部とのコミュニケーションツール」、「強力な経営変革ツール」、「集中の獲得」の3つ。CEOをはじめとするリーダーに、中期における大胆な変革を企図したシナリオ・戦略を構想し計画化したうえでコミットメントする意志があれば、強力な経営変革ツールとして中期経営計画が高い価値を持つこととなる

  • 中期経営計画策定の要諦は、「0ベース」、「計画の最終責任者が計画策定に深く関与」、「計画は1つ、シナリオは3つ」の3つ。計画の最終責任者が計画策定に深く関与しなければ、中期経営計画を策定しても本来の価値を享受することはできないだろう




中期経営計画は強力な経営変革ツール


企業経営において、中期経営計画は必要だろうか?


世界中の多くの企業で、この問いは過去数限りなく問われてきた。

日本の上場企業の8割が策定しているといわれるが、信越化学工業、伊藤忠商事、味の素等、独自の経営観のもと中期経営計画を廃止・不要と考える企業も存在する。

中期経営計画の策定には、中期の市場環境予測の困難さ、現場の疲弊、中途半端な期間、策定自体が目的化されてしまう等の問題点が指摘される。


こうした見解の分かれる中期経営計画だが、TS&Co.は中期経営計画は必要不可欠だと考えている。

なぜならば、中期経営計画は、企業経営において以下のような対外・対内的な価値を持ち、指摘される問題点を上回る価値を持つと考えるためだ。


外部とのコミュニケーションツール

企業は社会の公器であり、多くの外部ステークホルダーとの関係性のもと企業活動が営まれている。中期経営計画は、外部ステークホルダーとの円滑なコミュニケーションを可能とする。例えば、資本市場を舞台とした投資家との対話等は想像しやすいだろう。その他、顧客、サプライヤー、求職者、地域社会等、様々な外部ステークホルダーも中期経営計画を通じて、策定企業の方向性を確認し、取引をすべきか、入社すべきか、受け入れるべきか等、決断の参考としている。中期経営計画は、外部とのコミュニケーションツールとして高い価値を持つ。


強力な経営変革ツール

中期経営計画の実行期間である中期(3~5年)は、経営変革を通じて結果を創出するまでに十分な期間である。従って、CEOをはじめとするリーダーに、中期における大胆な変革を企図したシナリオ・戦略を構想し計画化したうえでコミットメントする意志があれば、強力な経営変革ツールとして中期経営計画が高い価値を持つこととなる。

また、中期経営計画は、基準の設定、すなわち企業の未来の方向性(いつまでに・どこに・なぜ・どうやって)とリーダーの組織の導き方に基準を与えてくれる。基準の設定は、リーダーの重要な役割であり、中期経営計画を通じて企業・組織に基準を与えられる点もまた、中期経営計画の重要な価値だ。


集中の獲得

計画はシナリオと異なり、最終的に1つに絞り1つを選ばなければならない。従って、中期経営計画は、中期において企業のエネルギーを1つの方向性に集中させる機能を持つ。経営では分散は悪手であり、集中は妙手だ。

中期において企業のエネルギーを1つの方向性に集中させる機能を持つ点は、中期経営計画の重要な価値である。

当然、中期経営計画の実行期間において外部環境や内部環境に大きな変化があれば、別のシナリオに基づく計画へと軌道修正すべきである。その場合も、再度選んだ計画のもと企業のエネルギーを1つの方向性に集中させる機能を享受できる。


以上述べた通り、中期経営計画は企業経営において必要不可欠だ。


では、中期経営計画を実践に活かしより良い経営を実現するために、どのような点に留意すれば良いだろうか。中期経営計画策定の要諦について紹介しよう。




中期経営計画策定の要諦


TS&Co.は、以下の点が中期経営計画策定の要諦だと考えている。


0ベース

中期経営計画は、企業経営における強力な経営変革ツールであり集中を獲得できる等、高い価値を持つ。

そのため、既存の思考枠組みをもとに思考するのではなく、まずは0ベースで自社のフルポテンシャルを追求し考え抜くことが重要だ。

例えば、以下のような問いについて今一度考え抜く必要がある。必要に応じて、当社のような外部の経営変革プロフェッショナル、戦略コンサルタントを起用してもいいだろう。


  • 定量目標の水準は低すぎないだろうか?

  • 定性目標の方向性は世界情勢や世界シナリオに照らし最適といえるだろうか?

  • 既存事業ポートフォリオはベストな布陣だろうか?

  • 既存事業の市場シェアを向上させるために、現在の競争戦略は最適だろうか?

  • グループ組織構造及び各社の現場組織構造は最適だろうか?

  • 戦略を大幅変更した場合に当該戦略を実行できるだろうか?


計画の最終責任者が計画策定に深く関与

中期経営計画は、外部とのコミュニケーションツールであり、計画の最終責任者は外部・内部のステークホルダーに対し計画の実現を約束することとなる。そして、その約束が計画の最終責任者及び組織の実行力を生む。

従って、本来、責任感が強く約束した結果の実現に対し強い意志を持つ責任者であれば、中期経営計画の策定に深く関与し、細部にわたって内容をつめ勝つべくして勝つ状態で実行に入りたいと考えるはずだ。

しかしながら、現実はそうなっていない。そのため、策定自体が目的化されてしまう等の問題点が指摘されているのである。

計画の最終責任者が計画策定に深く関与しなければ、中期経営計画を策定しても本来の価値を享受することはできないだろう。


計画は1つ、シナリオは3つ

計画はシナリオと異なり、最終的に1つを選ばなければならない。従って、中期経営計画は、中期において企業のエネルギーを1つの方向性に集中させる機能を持つ。

しかしながら、中期という期間では、ほぼ確実に計画開始時と異なる大小様々な予期せぬ外部環境・内部環境の変化と対峙することとなる。それに伴い、計画の軌道修正を余儀なくされる。従って、予めそうした変化を予見したシナリオを最低3つ(ベストシナリオ・ノーマルシナリオ・ワーストシナリオ等)準備しておき、大小様々な予期せぬ外部環境・内部環境の変化が生じても、即時別の計画へと軌道修正できる備えをすべきだと考えている。


読者が、中期経営計画の策定有無を判断される際や、実際に策定される際は、是非本論考で述べた中期経営計画の価値及び中期経営計画策定の要諦を参考にして頂きたい。



著者

澤 拓磨(さわ たくま)

TS&Co.グループホールディングス株式会社 代表取締役 創業者CEO

TS&Co.株式会社 代表取締役

経営変革プロフェッショナル


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