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世界のメガトレンド―2051-2100年

  • 澤拓磨 TS&Co.代表取締役 兼 最高経営責任者(CEO)
  • 5月11日
  • 読了時間: 12分

更新日:2 日前




概要

  • 2051-2100年における世界のメガトレンドは、「1.世界の重心移動と地政学リスク」、「2.社会のアイデンティティと行動の変容」、「3.後期高齢化社会」、「4.ブラックスワンと危機対応」、「5.飲食飢餓の解消」、「6.技術革新」、「7.地球温暖化の常態化」の7つ

  • CEOをはじめとするリーダーは、7つのメガトレンドの背景、現状、方向性を理解し、対応していかなければならない




TS&Co.グループは、2031-2050年における世界のメガトレンドは7つ存在すると考えている。そして、リスク(大・中・小)と発生時期(短期・中期・長期)の2軸で評価し優先順位をつけた(リスクが大きく、発生時期が短期であるほど優先度が高いと評価)。以降、優先順位順に紹介したい。





メガトレンド1:世界の重心移動と地政学リスク


1つ目は、世界の重心移動と地政学リスクだ。

2051-2100年には、世界の人口変化数トップ10をほぼアフリカ諸国が独占、世界人口の39%がアフリカ地域で生活していると予測されている(国連)。アフリカ地域は、資本主義の最後の経済フロンティアとして国・都市化が加速し、世界経済の重心移動が図られる。

地球システムを構成する政治・経済・社会・技術の全領域においてアフリカ地域へ世界の重心が移動すると予測される2051-2100年における地政学は、アフリカ諸国との関係が重要となることは間違いないだろう。  

日本は、2022年8月27日及び28日にチュニジアで開催された第8回アフリカ開発会議(TICAD 8)で、2023年から2025年の3年間でアフリカに対して官民合わせて総額300億ドル(約4兆1,000億円)規模の資金的支援を投じることも表明しており、アフリカとの関係は良好といえる。アフリカ開発会議は、3年に1度、日本とアフリカで交互に開催され、2100年までに開催されるであろう26回の会議においても経済支援が公約されれば、日本は相応の額をアフリカに支援することとなる。


CEOをはじめとするリーダーは、2100年までの世界において最も重要かつ重大な変化である「世界の重心移動と地政学リスク」を前提に、経営を構想しなければならない。  




メガトレンド2:社会のアイデンティティと行動の変容


2051-2100年においては、世界人口が110億人、うち25億人が65歳以上の人々で構成され(国連)、イスラム教徒がキリスト教徒の人数を上回り世界最大の勢力となることが予測される(米ピュー・リサーチ・センター)。

また、2025-2030年において既に急速に進展していた情報革命はさらなる進展を果たし、言語を必要とせずコミュニケーションが可能な世界が実現しているとも予測されている。


従ってCEOをはじめとするリーダーは、これまでと異なるアイデンティティを持った人々による、これまでと異なる思考プロセスを経た決断と実行がなされ、世界情勢も変化していくことを前提に、 経営システム全体を変えていかなければならない。  




メガトレンド3:後期高齢化社会


出生率は2050年以降も低下を続け、2051-2100年には死亡率が出生率を上回り、人口105億人中、20億人(19.0%)が65歳以上の人々で構成される後期高齢化社会を迎える。特に先進国でそのトレンドが顕著だ。


CEOをはじめとするリーダーは、それに伴って生じる、生産年齢人口の減少や移民の受け入れ、ウーマノミクス*といった社会課題・事業機会を認識し、経営戦略の構想、経営シ ステムの最適化を進めなければならない。


*ウーマン(女性)とエコノミクス(経済)を組み合わせた造語。女性の活躍による経済の活性化、働き手としても消費者としても女性のパワーが牽引する経済の在り方を説いた概念。ウーマノミクスを推し進めることで、柔軟な働き方や多様で複線的なキャリアが実現する社会、社会全体の生産性・ワークライフバランスの向上、M字カーブの改善、出生率回復などが期待されている。




メガトレンド4:ブラックスワンと危機対応


過去の歴史を振り返れば、10年に1度は経営システム全体を変える必要性も生じ得るブラックスワンや予期せぬ危機に、人類は見舞われてきた。

そして、2051-2100年には、ジカ熱、エボラ出血熱などの感染リスクが10億人規模に拡大する(Morgan Stanley投資家向けリポート)など、新たなパンデミック・リスクも予測されている。


従ってCEOをはじめとするリーダーは、最低でも10年に1度は、経営システム全体を変える必要性も生じ得るブラックスワンや予期せぬ危機が起こり得ることを前提に、備えをしておかなければならない。




メガトレンド5:飲食飢餓の解消


2051-2100年では、世界的な人口増加に伴って栄養不足人口と栄養不足蔓延率の上昇トレンドが継続して飲食が逼迫することに加え、いよいよ地球温暖化の影響が甚大となる。

例えば、2100年時点においても、世界有数の人口数を有すると予測される中国(10.65億人)や米国(4.34億人)などでは、地球温暖化の影響で、大豆やとうもろこしの生産量が大幅に減少することが予測されている(農業環境技術研究所)。


CEOをはじめとするリーダーは、2031-2050年同様、こうした巨大な社会課題を認識し、解決に向けた行動を模索し続けなければならない。




メガトレンド6:技術革新


2051-2100年は、宇宙開拓、コミュニケーションなどの分野で技術革新が進むと考えられている。

例えば、宇宙開拓分野では米国スペースX社CEOのイーロン・マスクが、国際宇宙会議IACにおいて火星にコロニーを建設し乗船料約1,000万円で一般に開放する構想を公表。

コミュニケーション分野では言語を必要とせずコミュニケーション可能な世界、頭の中の情報をネット上にバックアップできる世界、スマートフォン保有者はほぼおらずコンタクトレンズなどのウェアラブル機器に代替された世界の実現など、種々の領域で取り組みが進むと予測されている。


CEOをはじめとするリーダーは、2051-2100年においても、こうした日進月歩で進化し続ける技術革新を経営に活かしていかなければならない。  




メガトレンド7:地球温暖化の常態化


2051-2100年、地球温暖化が予測通りに進んでいた場合、われわれ人類の生活は一変している。

例えば日本では、2100年2月3日には、東京・京都の 最高気温が25.0℃超。冬の積雪が減り春以降の水不足が毎年発生、桜が開花せず風物詩がなくなる。2100年8月21日には、埼玉県熊谷市の最高気温が44.9℃、全国平均気温が40.0℃超となる。この結果、稲作や農作物の収穫量も年々減少し品質も低下。気候災害が増え、保険加入者に支払う保険金が巨額になり、損害保険ビジネスが崩壊すると予測されている(環境省「2100年未来の天気予報」)。

歴史を振り返れば、人間はあらゆる物事に慣れることで、その状態を当たり前へ昇華できる性質を持つため、それでもなんとか生活をやりくりできるとは思うが、われわれの生活が一変することは間違いないだろう。


従ってCEOをはじめとするリーダーは、迫りくる地球温暖化の進行ならびに地球温暖化の常態化を見据え、経営戦略の構想、経営システムの最適化を進めなければならない。



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※グローバル=世界全体、APAC(Asia-Pacific)=アジア太平洋、Americas=南北アメリカ大陸、EMEA(Europe, the Middle East and Africa)=欧州、中東、アフリカ


政治

【グローバル】

  • 大豆、とうもろこしの生産量が中国、ブラジル、米国などで大幅減(農業環境技術研究所)─2070年

  • 持続可能な開発目標(SDGs)が目標の2030年に62年遅れ達成(米NPOソーシャル・プログレス・インペラティブ)─2092年

  • 地球温暖化の進展。資本主義が暴走し産業革命以降と比較し平均気温4.8℃上昇、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書は地球の平均気温3.2℃上昇を予測、ポツダム気候影響研究所ヨハン・ロックストリーム博士のホットハウスアース理論(+1.5℃が地球の限界で早ければ2030年に達する)を鑑みれば、農業収穫量は減少し、台風に伴う大水害・海水温上昇、氷の融解(平均海面上昇は2065年までに24~30センチメートル、2100年までに40~63センチメートルに達する)、近海魚の絶滅が予測される。従い、温室効果ガスの削減が必要となり、パリ協定で産業革命前と比較し平均気温の上昇が1.5℃以内に抑えられるよう各国に依頼していた(IPCC、国連)─2100年


【APAC】

日本:

  • 人口減少・高齢化を乗り越えた成長・発展モデル(労働人口・生産年齢人口比率減少に伴う生産性向上や移民受け入れなど)の掲示により世界へ貢献(内閣府「選択する未来」委員会)─2060年

  • 外国人が無人の国土を占拠(『未来の年表』講談社現代新書)─2065年

  • 平均寿命が男性約85歳・女性約91歳、高齢化率38.4%、生産年齢人口4,529万人へ(国立社会保障・人口問題研究所(IPSS))─2065年

  • 主要国・地域のなかで最長期間を経て日本の公的債務がGDP比60%の健全な水準に回復(スイス経営開発国際研究所IMD「2010年世界競争力年鑑」)─2084年

  • 2048年開始の茨城県東海村の核燃料リサイクル施設(再処理廃止措置技術開発センター)の廃止作業が完了。総費用9,900億円(日本原子力研究開発機構/国の核燃料サイクル政策)─2088年

  • 2100年2月3日には、東京・京都の最高気温25.0℃超。冬の積雪が減り春以降の水不足が毎年発生、桜が開花せず風物詩がなくなる。2100年8月21日には、埼玉県熊谷市の最高気温44.9℃、全国平均40.0℃超。稲作や農作物の収穫量も年々減少し品質も低下。気候災害が増え保険加入者に支払う保険金が巨額となり損害保険ビジネスモデルが崩壊(環境省「2100年 未来の天気予報」)─2100年

  • 国内全エネルギーに占める電力割合が2008年24%から62%に拡大し化石燃料依存度が同75%から28%に低下(日本原子力研究開発機構「2100年原子力ビジョン」)─2100年

  • 日本は人口減を生産性でカバーしGDP世界4位へ(米ワシントン大学研究者らの英医学誌ランセット発表予測)─2100年

中国:2100年までに人口が7億人に減少し2050年に一時的に1位を記録した名目国内総生産(GDP)世界順位が2100年に再び2位に(米ワシントン大学医科大学傘下の保健指標評価分析研究所(IHME))─2100年

韓国:2100年までに韓国内の人口が縮小(2678万人に)し長期的に韓国経済の規模がフィリピン(人口は1億6946万人に)に追いつかれ韓国の名目国内総生産(GDP)世界順位が2100年までに20位に下がり、フィリピンは18位に上がる(米ワシントン大学医科大学傘下の保健指標評価分析研究所(IHME))─2100年

 【Americas】

米国:

  • 建国300周年。上院議員の半数を女性が占める(米国ボールドウィン・ウォーレス大学バーバラ・パーマー准教授予測─2076年

  • 2100年の名目国内総生産(GDP)世界順位は引き続き1位を維持(米ワシントン大学医科大学傘下の保健指標評価分析研究所(IHME))─2100年

 【EMEA】

欧州連合(EU):2100年までにカーボンニュートラルを目指す(EU理事会)─2100年

ドイツ:年金支給開始年齢を65歳から69歳に引き上げ(ドイツ連邦銀行)─2060年

アフリカ:アフリカの人口が世界人口の39%を占める(国連)─2100年

 

経済

【グローバル】

  • 世界の国内総生産(GDP)合計が2012年対比2.2倍に拡大(ヨルゲン・ランダースBIノルウェービジネススクール教授「2052 今後40年のグローバル予測」)─2052年

  • 二酸化炭素を排出しない鋼材があたりまえに(国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency))─2073年

  • 男女の経済格差が世界中で解消(世界経済フォーラムWEF年次報告書)─2095年

  • 地球温暖化対応遅延でGDP最大25%消失(気候変動リスクなどに係る金融当局ネットワークNGFSの気候変動シナリオ)─2100年

  • GDP地域別内訳予測によると世界GDPの50%をアフリカが占める(アンガス・マディソン)─2100年

【APAC】

日本:

  • 地球温暖化による気温上昇で夏場の鶏肉生産量が近畿、東海以西で15%以上低下(農林水産省)─2060年

  • 地球温暖化の影響で北海道がリンゴの栽培適地になる(農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所)─2060年

  • 地球温暖化の影響で米の収穫が北海道で13%増、東北以南で8〜15%減少(農林水産省)─2060年

  • 地球温暖化で東日本と西日本で米の生産高格差が生じる(農業環境技術研究所)─2070年

インド:

  • 日本のGDP4.6兆ドルに対しインドのGDPは25.5兆ドル(公益社団法人日本経済研究センター)─2060年

  • 中国とインドのGDPが経済協力開発機構(OECD)全体を上まわる(経済協力開発機構(OECD))─2060年

【Americas】

米国:

  • メディケア(高齢者医療保険)制度の総支出額が2012年GDPの3.6%から6.2%に(米社会保障庁推計)─2085年

  • 中国に抜かれたGDPが再び首位奪還(米ワシントン大学研究者らの英国医学誌ランセット掲載論文)─2098年

【EMEA】

欧州連合(EU):経済の潜在成長率(将来達成可能な経済成長率)が高齢化の影響で現2.4%前後から1.2%に低下(欧州委員会)─2060年

 

社会

【グローバル】

  • 人口が100億人に到達(国連)─2057年

  • 人口105億人、65歳以上20億人へ(国連)─2070年

  • 世界人口に占める割合がイスラム教徒(32.3%)、キリスト教徒(32.3%)と拮抗(米ピュー・リサーチ・センター)─2070年

  • 途上国への技術移転が進まず世界で70億人の人が水不足に悩む(東京大学生産技術研究所、総合地球環境学研究所)─2075年

  • ジカ熱、エボラ出血熱などの感染リスクが10億人規模に拡大しワクチン需要増加(Morgan Stanley投資家向けレポート)─2080年

  • 生産年齢人口(15-64歳)がピークに(国連)─2090年

  • 人口110億人、65歳以上25億人(国連)─2100年

  • 第52回夏季オリンピック開催(国際オリンピック委員会(IOC))─2100年

  • イスラム教徒がキリスト教徒の人数を上回り世界最大の勢力に(米ピュー・リサーチ・センター)─2100年

  • ヒマラヤの氷河が1/3〜2/3消滅(国際総合山岳開発センター(ICIMOD))─2100年

  • 男子100メートル走の世界記録が9秒15に(ニュージーランドのヒュー・ノートン博士)─2100年

【APAC】

アジア:人口が53億人でピークに(国連)─2055年

日本:

  • 人口が1億人を割り9,924万人へ(国立社会保障・人口問題研究所(IPSS))─2053年

  • 厚生年金の積立金が枯渇(『財政危機と社会保障』講談社現代新書)─2055年

  • 生産年齢人口が5,000万人を割る(国立社会保障・人口問題研究所(IPSS))─2056年

  • 弁護士の数が約12万3,500人に達し欧米と肩をならべる(日本弁護士連合会)─2056年

  • 人口9,284万人、高齢化率38.1%(国立社会保障・人口問題研究所(IPSS))─2060年

  • 国民年金の積立金が枯渇(『財政危機と社会保障』講談社現代新書)─2060年

  • 1950年の現役世代約12人で高齢者1人を支える時代から現役世代1人で高齢者1人を支える時代に(総務省)─2060年

  • 国内の水需要が現状の4割に縮小する(厚労省)─2060年

  • 人口が8,808万人へ(国立社会保障・人口問題研究所(IPSS))─2065年

  • 日本近海からサンゴが消滅する(環境省)─2070年

  • G7初のゼロ目標達成となるCO2排出量が実質ゼロへ(日本政府)─2070年

  • 政府の年金一元化により年金財政が積立金残高366兆円を実現。168兆円の余剰が生まれる(厚労省)─2100年

  • 1970年大阪万博時に埋設されたタイムカプセルが開封・点検時期を迎える。最終開封日は6,970年(野村総合研究所(NRI))─2100年

インド:人口が17億人弱でピークに(国連)─2060年

韓国:高齢化率が2015年比約3倍の約37%と日本より深刻化(経済協力開発機構(OECD))─2060年

シンガポール:排水の再処理と海水の淡水化がシンガポールの水需要の85%を占める(シンガポール政府)─2060年

フィリピン:首都マニラにスマートシティ(居住人口120万人、雇用80万人)誕生(フィリピンと日本の「ニュークラークシティー(NCC)」開発構想─2065年

【Americas】

米国:人口が4.34億人に達し2020年比1.03億人増加(国連経済社会局)─2060年

【EMEA】

イタリア:ベネチアで110センチ級の高潮が年65回発生。1980年代の年平均2.6回、2019年の年平均8.2回を大きく上回る(ベネチア市高潮対策センターの予測発表)─2060年

アフリカ:

  • 資本主義の最後の経済フロンティアとして国・都市化が加速し世界経済が重心移動(国連)─2100年

  • グローバル中流階級誕生。20年で30億人の命を救う─2100年

     

技術

【グローバル】

  • 言語を必要とせずコミュニケーション可能な世界が実現(北海道大学)─2100年

  • 頭の中の情報をネット上にバックアップできる世界が実現(北海道大学)─2100年

  • スマホ保有者はほぼおらずコンタクトレンズなどのウェアラブルな機器に代替された世界が実現(北海道大学)─2100年

【APAC】

日本:

  • 女川原子力発電所1号炉全工程廃止措置が完了(原子力規制委員会)─2053年

  • 玄海原子力発電所2号炉全工程廃止措置完了(原子力規制委員会)─2054年

  • 3Dプリンターで街が作れる時代に(慶応大学SFC研究所)─2070年

【Americas】

米国:スペースXが火星にコロニーを建設。乗船料約1,000万円(スペースX社イーロン・マスクCEOの構想@国際宇宙会議IAC)─2100年

【EMEA】

英国:期間90年・総費用約8億ポンド=約1,340億円を賭けたウェールズのトラウスフィニス原発(1965年から26年間運転)が廃炉完了(英国原子力廃止措置機関NDA・同マグノックス社)─2083年


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著者

澤 拓磨(さわ たくま)

TS&Co.グループホールディングス株式会社 代表取締役 CEO創業者

経営変革プロフェッショナル


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