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経営変革を企図する企業は、自社の経営資源で経営変革を進めることが難しい場合、外部の経営変革プロフェッショナルを起用する場合がある。そして、認知バイアスの排除や足りない経営知見等を充足し、経営変革を実現していくのだ。
本稿では、経営変革を企図する企業が外部の経営変革プロフェッショナルを起用する場合の要諦を考察した。要諦は5つだ。
要諦1. 経営変革プロフェッショナルを起用する背景と目的を明確にしCEOが方向性を決断する
経営変革の実現確率を上げるために外部アドバイザーを起用する場合、はじめに自社固有の背景と目的を明確にしCEOが方向性を決断しておくことが成否を分ける重要な分岐点となる。
背景とは中期経営計画等で定めた(定めたい)経営変革の与えられた時間・目標値・経営戦略等のことであり、目的とは当該経営変革の実現確率を上げるための外部の経営変革プロフェッショナルへの依頼条件(機能・権限・期間・報酬体系等)のことだ。
背景と目的を整理する際には、自社単独で検討を進めるか、この段階より外部の経営変革プロフェッショナルに相談を持ちかけ検討を進める方法が考えられる。
いずれの進め方においても共通するのは、まず経営変革の全体像を見える化したうえで以下論点に最適解を見出していくことだ。
・第三者・アウトサイダーからの客観的な助言が必要か?
・中長期的に自社が強化していくべきコア業務は何か?逆にノンコア業務は何か?
・外部のプロフェッショナルでなければ解決困難な課題は何か?
・経営変革に関与可能な社内人材は誰か?
自社単独、あるいは、外部の経営変革プロフェッショナルを巻き込みながら、これらの論点に最適解を見出しROI(投資対効果)を慎重に検討したうえで、経営変革の実現確率を上げるために外部の経営変革プロフェッショナルを起用すべきか、起用する場合どのような背景と目的を持ち起用するのか、はじめにCEOが方向性を決断することが鍵だ。
要諦2. 経営変革プロフェッショナルのベストパフォーマンスを引き出すべく受け入れ準備をする
経営変革の実現確率を上げるために、外部の経営変革プロフェッショナルが最高のパフォーマンスを発揮できるよう行う受け入れ準備は、一般的なプロジェクト・マネジメントにおけるプロジェクト設計とは考え方が異なる。留意すべきポイントは6つだ。
1つ目は、社内への背景と目的の浸透である。CEO自ら経営変革を行う背景と目的を紙3枚程度(1枚目[過去の実績値と未来の目標値]、2枚目[今後の経営戦略]、3枚目[今後のスケジュール]等)に簡潔にまとめ、キーマンに対しCEO自ら話者となりコミットメントを示すことで外部の経営変革プロフェッショナルは最高のパフォーマンスを発揮できる。
2つ目は、経営変革の全体像と外部の経営変革プロフェッショナルへの依頼条件である。依頼条件とは背景と目的にて外部の経営変革プロフェッショナルへの依頼条件として設定した機能・権限・期間・報酬体系等のことだ。この段階にて必要に応じ改めて見直しを行って頂きたい。
3つ目は、業務プロセス・情報管理・コミュニケーションである。戦略に基づく業務プロセスの厳格な設計、競合への情報漏洩リスク等を加味した情報管理方針の検討、プロジェクト・メンバー間でのコミュニケーション方法(主要窓口、電話・メール・オンラインチャットツールの使用等)について検討していく。
4つ目は、予算である。戦略を実行するために必要となる資金であり背景と目的の検討時に設定した金額をこの段階にて必要に応じ改めて見直しを行って頂きたい。
5つ目は、プロジェクト体制である。体制は経営変革の実現確率を上げるために極めて重要だ。経営変革を実践するには中長期にわたるコミットメントと高い専門性が求められることから、内製での業務執行を基本に、背景と目的にて整理した方向性に沿い外部の経営変革プロフェッショナルの起用有無を決断し、自社固有の環境に対応するために最適な体制を編成して頂きたい。
6つ目は、働き方である。業務プロセス上のフェーズやプロジェクト・メンバーの特性に合わせ経営変革の実現確率を上げることのできる最適な働き方を選択すべきだ。例えば、リモートワークか常駐か、その際に固定席を設けるかフリーアドレスかあるいは特別なプロジェクト・ルームを設けるか、業務執行を円滑に進めるため外部の経営変革プロフェッショナルにもメールアドレスや名刺を準備するか等、1つ1つ選択していくのである。
以上6つの留意すべきポイントについて事前にしっかりと準備しておくことができれば、外部の経営変革プロフェッショナルを受け入れ経営変革を実現し続ける確率を上げることができるだろう。
要諦3. 経営変革プロフェッショナルを見極め選抜する
外部の経営変革プロフェッショナルを見極め選抜する際には、背景と目的に照らし、経営変革プロフェッショナルを組織単位だけではなく、チーム単位・個人単位で比較し評価すべきだ。
経営変革の実現確率を上げる外部の経営変革ファームには、戦略コンサルティングファーム、会計系コンサルティングファームの戦略部門、TS&Co.のような経営変革の支援を強みとするブティック系の専業ファーム等がある。
本業とするソリューションに起因し組織ごとに特徴が異なり、戦略コンサルティングファームであれば企業戦略・競争戦略立案、会計系コンサルティングファームの戦略部門であれば会計情報と整合した戦略立案、TS&Co.であれば経営変革全体を総合的に支援し非連続な結果の実現とサステナビリティに貢献することを強みとする。
組織単位の比較・評価を終えた後、次に、チーム単位の比較・評価を行う。多くの場合、外部の経営変革ファーム内では複数案件を並行して請け負っており、稼働の関係上、組織単位では素晴らしくとも必ずしも自社が依頼する案件に最適化されたチームアップがなされるとは限らない。従って組織単位の比較・評価に加えチーム単位の比較・評価も厳格に行うことが重要だ。
さらに、チーム単位の比較・評価に加え、個人単位の比較・評価も行う。これは経営変革の業務執行は非常に専門性が高く個の力に大きく依存するためだ。外部の経営変革ファームの筆頭となる経営コンサルティングファーム業界は慣習的にキャリア採用者が多く現所属組織名だけでは個の力を適切に比較・評価することはできない。従って個人単位での業務実績や得意・不得意等まで外部の経営変革ファームへのヒアリングを通じて深く把握していく必要がある。こうしたプロフィール上の比較・評価に各社が提供する価値(実績・ブランド・提案書等を通じた提案の質や的を得たコミュニケーション等)と価格(固定報酬・成果報酬等の金額水準)の比較・評価を加え、最も自社固有の環境に対応するために最適な外部の経営変革ファーム・チーム・個人を選抜し、最後に、最も意思疎通・気心知れた関係が構築された経営変革プロフェッショナルを選抜することを推奨したい。
要諦4. 経営変革プロフェッショナルを試用し経営変革を実現する
経営変革を実現するまでには数年にわたる時間と数多の難易度の高い論点を解き続ける必要があるため、受け入れる側(経営変革の主体者)と受け入れられる側(外部の経営変革プロフェッショナル)ともに高い緊張感を維持し続けなければならない。
そのための有効策が、契約条件(期間や報酬体系等)にて、必然的に、受け入れる側・受け入れられる側ともに「試用している・されている」意識を得られる条件を定め経営変革に挑むことだ。例えば、一定期間内に事前に定めた成果を創出した場合に一定の報酬を提供する成功報酬型の報酬体系や一定期間内に事前に定めた成果を創出した場合のみ契約期間を延長する等の取り決めである。
なお、最終的に、経営変革の実現確率を上げるため外部の経営変革プロフェッショナルを有効活用するには、CEOと外部アドバイザーのコミュニケーションの質と量が最も重要となる
間違ってもプロジェクト途中で梯子を外したり進捗管理にCEOが関与しないといった事態は避けるべきだ。
要諦5. 再挑戦時の内製化を目指す
経営変革の実戦期間は、経営変革再挑戦時の内製化に向けた準備期間でもある。従って、経営変革をリード頂くことを期待する次期CEO候補者等に外部の経営変革プロフェッショナルの見識や業務執行能力を移植し、経営変革ノウハウの内製化を期待すべきだ。そして徐々に自社流経営へと昇華し経営変革の実現を恒常化したい。
経営変革を企図する企業は、外部の経営変革プロフェッショナルを起用する場合、上記5つの要諦を意識し検討を進めてみては如何だろうか?
著者
澤 拓磨(さわ たくま)
創業者兼代表取締役グループCEO
経営変革プロフェッショナル
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